蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…もう無理。何にも入らない」
「…私も」

テーブルの上の料理は、まだ半分くらい残っているが、二人とももう一口も食べられそうになかった。

お互い顔を見合わせて笑った。

「…やっと笑った」
「…え」

優しい笑みを浮かべ、由紀が言う。雪愛は、驚いたように由紀を見つめた。

「…元気なかったからね。…笑顔も無くなったし…ねぇ、その心にしまい込んでるもの、一回全部さらけ出してよ」
「…由紀ちゃん」

「…助けてあげるなんて、カッコイイ事言えないけど、独りで抱え込んでてもしょうがないじゃない?一人より二人の方が、少しでも楽になるかもしれない。だから」

…由紀の説得に、雪愛は洗いざらい話す事にした。

…全ての事情を知った由紀は、絶句していた。

「…そんな酷い…雪愛、よく一人で、そんな事抱え込んでたね。…辛かったね」

話し終える頃には、泣いて泣いて、嗚咽を漏らす雪愛を、由紀は何度も背中さすっていた。
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