蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…そんなに傷つけた三条先生と、本当に結婚するの?」

由紀の問いかけに、雪愛は答えられなかった。何もかも投げ出してしまっている今、考える事もままならない。

「…止めても良いんだよ。…もう、何にも縛られるものは無くなったんだから。そんな人と、結婚なんて、しなくていいんだよ」

なおも泣き続ける雪愛の背中さすりながら、由紀は諭すように言い続けた。

「…笑顔になれない結婚なんて、幸せになれない結婚なんて、しないで」

「…由紀、ちゃん」

「…私が側にいてあげる。雪愛が心から笑って、幸せだと感じられるまで、必ず側にいてあげるから、勇気を振り絞って断ろうよ。1人が無理なら、私も一緒に行くから」

「そんな事したら!…そんな事したら。由紀ちゃんが、この病院にいられなくなる」

「…バカね。クビになったって、構うもんですか!今は看護師不足で、どの病院も、口から手が出るほど看護師が欲しいのよ?どうにでもなるわよ。それに、いざとなれば、永久就職って手もあるんだから」

「え…由紀ちゃん、そんな人いたの?」
「…いるわけないじゃん」

由紀はそう言って笑った。
< 131 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop