蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
…食事を終わらせたその足で、雪愛は実家に向かっていた。

…母の真意がわからなかったからだ。

「お母さん」
「…雪愛?」

気怠そうにソファーから体を起こした母は、雪愛を見つめた。…その顔は、本当にしんどそうで、顔色も悪い。

「…お母さん、具合悪いの?…ううん、悪いよね?」
「…大丈夫よ、…それより、突然どうしたの?」

話をすり替えられ、ジッと母を見据えたが、母は、雪愛のここに来た理由を聞くばかりで、具合に関して答えようとはしなかった。

雪愛は溜息をついて、ここに来た理由を話し始めた。

「…何で、三条先生やご両親に会う事を勝手に決めてしまったの?私は、結婚なんて「雪愛」

言葉の途中で、母は、雪愛の言葉を遮った。

「…雪愛、逃げていても、何にもならないと思うの」
「…え?」

黙って母を見つめた雪愛。

「…面と向かって話をしましょう」
「…お母さん、私は」

「…この結婚は、なかった事にして欲しいって」

そう言って、微笑んだ母。雪愛は、潤んだ瞳で母見た。

「…好きでもない人と結婚なんて、お母さん認めないわよ。…雪愛、貴女は、蘇芳先生って言う人が、好きなんでしょう?」
「…どうして、蘇芳先生の事」

「貴女が、寝ている間に、何度もその名前を言っていたから。…あぁ、その人が、雪愛が、好きで好きで大好きで、泣く泣く別れた人なんだろうって思ったわ」
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