蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
母の言葉に、涙が流れる。

「…二人なら、断る事だって怖くないでしょ?」
「…お母さん、相手は、大きな病院の院長先生だよ?」

「…だから何?…そんなのくそくらえよ」
「…お母さん、口悪い」

雪愛の言葉に母は笑った。

「お母さんは、いつでも、どんな時も、雪愛の味方だから。どんと構えていなさい」

「…ありがとう…⁈お母さん!」

その時だった。突然めまいを起こしうずくまった母。雪愛は慌てて母を支えた。

「お母さん、病院行こう」
「…まだ行けない」

「どうして⁈」
「決着を見届けるまでは行かないわ」

「お母さん‼︎」
「…お願い雪愛。貴女が幸せになる姿をこの目で見たいの」

その言葉に、雪愛は悟ってしまった。…母の病気は、予想以上に悪いという事を。

「お母さん、どうしてこんなになるまで放っておいたの?」

泣きながら問いかけた。母は、青白い顔で微笑んだ。

「失礼ね、ちゃんと、通院はしてるわよ。薬だって飲んでるし」

「…手術とか、しなくていいの?」
「…」

答えない母に、雪愛は頭を抱えた。
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