蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
…上手く流されている事にも気づかない雪愛。

…しかも、意外な事に、プライベートの蘇芳先生は、よく喋る。だから、そのせいで、買い物が楽しくて仕方ない雪愛。

…だが、買い物が終わり、再び車に乗り込んで、雪愛は我に返った。

「…蘇芳先生!」
「…なんだ、急に?君の声は、やけに高過ぎる…もう少し、トーンを下げて話してくれるか?」

片耳を押さえ、蘇芳先生が呟く。

「…すみません。…じゃなくて!私、蘇芳先生の『モノ』になったつもりはありませんから!私のご飯が美味しいと言ってくれるから、作るだけで、だから…それだけですから!」

「…」

…その後は沈黙のまま、車は蘇芳先生の住む、マンションに着いた。

「…おっきー」

高層マンションを見上げ、雪愛は呟く。自分の家は、1Kの小さなアパートだから。
「…そんなところに突っ立ってないで、ついてきたまえ」

口を開けて見上げる雪愛を少し笑い、でもすぐ真顔になって、蘇芳先生が言った。

口が開いてることに気づいた雪愛は、顔を赤くして、先を行く蘇芳先生をそそくさと、追いかけた。
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