蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
雪愛の問いかけに、蘇芳先生は今までの経緯を説明し始めた。

三条総合病院を辞めるにあたり、次の病院を探していた矢先、公演や代理オペをしていたT大付属病院の院長と、外科の教授が、蘇芳先生を招いてくれた。

…だが、これを機に、開業という道も考えた事。

それを知った院長が、T大付属病院に籍を置いてくれるなら、全面的に開業をバックアップしてくれる事になり、話はトントン拍子で進んだ事。

…それから、休みだった今日。三条総合病院の外科の友人に呼び出され、病院に行った事。そこで由紀に会い、雪愛の今の状況を聞いた事。

…雪愛の母の具合が悪い事も。

その足で、母が通う病院も由紀が教えてくれて、そこの医師から、病状を確認し、それを院長に相談すると、直ぐに連れてくるように言われた事も。

…今日、この場所にいる事は、薫子先生が教えてくれた事。

「…もう少し、早く迎えに来るつもりだったが、今後の準備に手間取った…ゴメンな」

蘇芳先生の心からの謝罪に、雪愛は何度も首を振った。

…今ここに、蘇芳先生がいる。それだけで、雪愛は幸せなのだから。

「…雪愛、今から言う事よく聞くんだ」
「…はい」

「…お母さんの病状は、相当悪い。病院に着いたら、直ぐに検査して、そのままオペになる」
「…死んだりしませんよね?」

雪愛の膝枕で荒い息をする母を見下ろし、雪愛が問う。
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