蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…正直なところ、五分五分だ」
「…そんな」

「…薬を飲んでたとは言え、今まで放置し過ぎたせいだな」
「…お母さん」

「…泣くな雪愛。…俺が必ず治してやる。だから、今は、お母さんの無事だけを祈ってろ」

蘇芳先生の力強い言葉に、雪愛は、何度も頷いてみせた。

…病院に着くや否や、ストレッチャーが運ばれてきて、母はそれに乗せられ、検査室へ。蘇芳先生は、看護師から白衣を受け取ると、直ぐに着用して、その後を追う。
雪愛も、検査室へ行くと、近くの待合室で待つ事になった。

…間もなくして、検査結果が出ると、案の定、直ぐにオペとなった。

泣きながら手を合わせ、母の無事お祈る雪愛。そこに、オペ着に着替えた蘇芳先生が雪愛の前に来た。

「…しっかりしろ、雪愛。必ず成功させるから」
「…はい、よろしくお願いします」

泣きながら言う雪愛の頬にキスをした蘇芳先生は、手術室の中に入っていった。

…オペは、5時間にも及ぶ、大手術となった。

…『手術中』のランプが消え、母が沢山の管に繋がれ、酸素マスクをした状態で出てきた。

「…お母さん。…蘇芳先生、お母さんは?」

雪愛の問いかけに、蘇芳先生は微笑んで見せた。
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