蕩けるくらいに抱き締めて（続き完結）

「…わー、凄い！綺麗〜！」

まるで、どこかのホテルのスイートルームのような部屋。大きな窓からは、夜景が一望出来る。雪愛はあちこちに視線を移し、歓喜の声をあげている。

「…女っていうのは、こう言う部屋が、好きだな」

ポツリと呟いた蘇芳先生は、キョロキョロと辺りを見回す雪愛を愛おしそうに見つめていた。…蘇芳先生は、コロコロと表情を変える雪愛を見るのが好きだった。声は、相変わらず耳に響くので、苦手らしいが。

「…ぁ、すみません。人様のお家をキョロキョロと見すぎました」

ハッと我に返った雪愛は、バツの悪そうな顔をして、頭を下げた。

「…別に構わない。これから好きなだけ見られるんだから、何処でも勝手に開けて見ればいい。…キッチンはこっちだ」

そう言うと、蘇芳先生は、雪愛をキッチンに案内した。

「…凄い。…蘇芳先生って、料理をするんですか？」

沢山の調理器具が並び、食器も良いものばかりが揃えられている。

「…いや、全然」

その言葉に、雪愛は目を見開いた。

「勿体無い！調理器具や食器が可哀想です！使われるために作られたものなんですから、使ってあげなきゃ！…これ、どれを使っても良いんですか？」

目をキラキラと輝かせ、蘇芳先生を見る雪愛。それを見た蘇芳先生はフッと笑い。

「どれでも好きな物を使ってくれていい。…本当に、一週間分も作るのか？」

買い物中、雪愛は一週間分の材料を買い込んだ。

「もちろんです。今週は夜勤なんかもあるし、毎日のように来るのは無理ですから。冷蔵庫に入れときますので、チンして食べてください」

説明が終わると、雪愛は早速料理を始めた。