蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
業者に頼んできた雪愛が、二人の元に戻ってきた。

「…雪愛ちゃん」
「三条先生、あの時私の気持ちは言いましたが、分かってはもらえませんでしたか?」

「…分かったよ。雪愛ちゃんが、どれだけ蘇芳先生が好きで、蘇芳先生を必要としてるのか」
「それなのに、なぜまた来たんですか?」

困惑顔で言う雪愛。三条先生は数秒雪愛を見つめ、最後に言った。

「…蘇芳先生は、雪愛ちゃんとは結婚出来ないよ」

思いもよらない爆弾発言に、雪愛は言葉を失った。

「…蘇芳先生、あんたは、自分の立場を一番よく知ってる筈だ。…開業するんだろ?大学病院のバックアップで」

「…それが?」

「…そんな大それた事をするには、それなりの代償もある筈だ」

三条先生の言葉に、蘇芳先生は黙り込んだ。

『代償』?それは一体どういう事なのか?

黙り込んだ蘇芳先生を睨んだ三条先生は、それ以上何も言わず、その場を去ろうとする。

「三条先生!」
「…雪愛ちゃん、俺は散々君を傷つけた。悪いと思ってる。だから、もう解放してあげるよ。今迄ゴメンね…でも、君が俺の所に来るというなら、いつでも歓迎するから」

そう言って、三条先生は居なくなった。

重たい置き土産を置いて。
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