蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
雪愛の申し出に驚き、蘇芳先生は首を振った。

「雪愛、君の申し出は嬉しい。でも、そうじゃない」
「・・・え?」

「俺は、大学病院に籍を置いたまま、開業するんだ。だから、休診日の日に、大学病院に行って、オペをしたり、俺の病院から手術が必要な患者は、大学病院に回される。だから、実質的には、それで十分お金は返せるんだ」

「…じゃあ、私が納得しなきゃいけない事って?」

首を傾げる雪愛の頭を優しく撫でた蘇芳先生。

「まずは、正式に俺の妻になってほしいと言う事」
「・・・え」

「俺は、雪愛が傍にいてくれることが、何より幸せだし癒される。忙しい仕事から帰ったら、雪愛が笑顔で迎えてくれることが何より元気の源なんだ」
「…蘇芳先生」

「…もう一つは、俺が開業する病院の正式な看護師てして、一緒に働いてほしい」
「え?!いいんですか?」

雪愛の言葉に、蘇芳先生は笑顔で頷いた。

「もちろん。雪愛は看護師が天職だと俺は思う。患者の対応も、凄くイイし、勉強熱心で、医師に意見もする。そんな雪愛と一緒に仕事が出来れば、鬼に金棒だ」

「私を買いかぶり過ぎですよ。私はまだたった二年のキャリアしかない」
「働いた期間なんて関係ない。分からない事があれば、勉強すればいいし、俺にも教えられる。最初は小さい病院だから、雪愛一人で看護師として働いてもらうつもりだから、苦労を掛けるけど、軌道に乗ってきたら、何人か看護師を増やす予定だ。…どうだろう?俺の願いは、叶えてくれるか?」

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