蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
三条先生がいなくなり、ホッとしたのも束の間、雪愛の視界はグラリと歪み、思わずその場にしゃがみ込んだ。

「…」

数分間、その場にしゃがみ込んで、うずくまっていた雪愛。その間、今後の事を考えていた。

蘇芳先生の病院は、刻一刻と準備が進んでいる。

看護師として、蘇芳先生を支えたい。でも、今この状態では、支える事すらままならない。

それに、蘇芳先生がこの事を知ったら、どう思うだろうか?

こんな時にって言われるかもしれない。

…三条先生に言われた通り、話すべき事なのは十分分かっている。でも、なんだか怖くて話せない。

…雪愛はようやく立ち上がると、勤務に戻った。

…。

午後5時半過ぎ。勤務を終えた雪愛は、着替えを済ませると、ある場所に向かった。

そこは…。

建設中の蘇芳先生の病院。

1年後の春、開院予定だ。

「…順調だなぁ」

と、雪愛の口から出た言葉。

もう少し延期されれば、なんとかなりそうだが、そうも言っていられない。

病院の建設も順調なら、中の医療設備や、今後の方針なども、大学病院と話を詰め、順調だと、蘇芳先生から聞いていた。
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