蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…風邪はひいてません」
「…じゃあ、なんでマスクなんて?」

「…まだご飯の準備中なので、着替えてきてください」
「…雪愛!」

蘇芳先生の言葉に、雪愛は聞く耳を持たないかのように、キッチンに行ってしまった。

溜息をついた蘇芳先生は、とりあえず、着替えに行き、それからリビングに向かった。

すると、準備を終えた雪愛が、キッチンからリビングを覗いている。

「…雪愛、おいで」

優しくそう言えば、雪愛はマスクを外して、蘇芳先生の横に座った。

「…で、マスクをしてた理由は?」
「…怒らない?」

「…マスクをしてただけなのに、なんで怒る必要がある?」
「…私の事、見捨てない?」

「…雪愛、言ってる意味がさっぱりわからない」

困惑顔の蘇芳先生に、雪愛は一呼吸置いて、一気に言い放った。

「…赤ちゃんが出来ました!」
「…え?」

雪愛の告白に、蘇芳先生は驚いて固まっている。だから、言いたくなかったのにと思いながら、雪愛は続けた。

「こんな大事な時期に、赤ちゃんなんて…蘇芳先生の病院で一緒に働けるって楽しみにしてたのに…蘇芳先生の期待にそいたかったのに…それなのに「雪愛」

言い終わらないうちに、蘇芳先生は雪愛をギュッと抱きしめた。
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