蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…だから、マスクか」
「…蘇芳先生、ごめんなさい」

雪愛の謝罪に、蘇芳先生は驚いて、雪愛顔を見つめた。

「なぜ謝る?」
「だって」

「こんなに嬉しいのに、なんで謝る?」
「…え?」

蘇芳先生の言葉に、潤んだ瞳で見上げる雪愛。

「…ヤバイな。嬉し過ぎて、飛び跳ねそうだ」

蘇芳先生の言葉に、雪愛は目を丸くする。

「…雪愛は嬉しくないのか?」
「…嬉しい…素直に喜んでもいいの?」

不安げな顔で、蘇芳先生を見る雪愛。蘇芳先生は、雪愛の顔を両手で包み込んだ。

「当たり前だろう?結婚しようって言ったよな?雪愛もしたいっていってくれた。順番は少し違うけど、俺は凄く嬉しいし、喜んでる。看護師は別の人を探せばいい。赤ちゃんが無事に生まれて落ち着いてからでも、手伝える事だろ?」

「…蘇芳先生…産んでもいいの?」


「…産んでほしい。…産んでくれるか?」
頷いた雪愛を見て、蘇芳先生は安堵の溜息をついた。

「…つわり、辛いのか?」
「…匂いが少し、苦手です」

「無理して食事の用意しなくてもいいからな。…他に困っている事は?」
「…貧血があるからって、鉄剤を処方されたんですけど、めまいを度々起こしちゃって」

困ったように呟いた雪愛を、蘇芳先生は再び抱きしめた。

< 160 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop