蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「お父さんも中で待ってるから、どうぞ」

相変わらずクスクスと笑いながら、お母さんはリビングに二人を促した。

「…おっと、失礼」

雪愛に気づいた蘇芳先生のお父さんは、吸っていたタバコを慌てて消す。

「…気になさらないでください」

と言う雪愛にお父さんは首を振る。

「いやいや、タバコは有害だからね。大事な体に、そんなものは良くないよ…改めまして、秀明の父です」

改まって挨拶をされ、雪愛も慌てて挨拶を返す。

「初めまして。島崎雪愛です」
「…初めまして?」

「…え?」

お父さんの言葉に、マジマジとお父さんの顔を見た雪愛は。

「…あ!」

と、思わず声を上げた。

「どうしたんだ?親父と、知り合い?」

蘇芳先生の言葉に、なんと答えたらいいものかと、雪愛は困惑する。

そこに助け舟を出したのはお父さん。

「…秀明、お前の結婚を成就させてやった救世主だな」

そう言ってお父さんが笑う。

「…雪愛さんと、知り合いだったの⁈それなら、もっと早く紹介してほしかったわ」

と、ちょっと拗ねるお母さん。

「…どういう意味?」

と、雪愛の耳に小声で問いかける蘇芳先生。雪愛は笑うしかない。

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