蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「特に何も異常がなければ、一か月後の健診に、愛ちゃんと来てください」

「わかりました。本当にお世話になりました」

雪愛に対しては、とても穏やかな坂本先生だが、蘇芳先生に目を合わせようともしない。

雪愛はとりあえず、蘇芳先生と病院を出て、マンションに帰った。

…マンションに着き、愛をベビーベッドに寝かせると、蘇芳先生に抱きついた。蘇芳先生も、それに応えるように、抱きしめ返す。

「…秀明さんただいま」
「…おかえり、雪愛」

2人でソファーに座ると見つめ合い、軽くキスを交わす。そして離れて再び見つめ合うと笑いあった。

また、雪愛は蘇芳先生に抱きつく。

「…どうした雪愛?甘えん坊になったのか?」

珍しく甘える雪愛を抱きしめながら、蘇芳先生が問いかける。

雪愛は聞こうかどうか悩んだが、聞きたい事を聞く事にした。

「…秀明さん」
「…ん?」

「坂本先生と、何かあったんですか?」
「…」

「答えたくないならいいんです。無理強いは嫌ですから」
「…いや、もうだいぶ前の話だ。坂本は俺と同期で、今は産科医に転向してるみたいだが、元々は俺と同じ外科医だった」

蘇芳先生の言葉に耳を傾ける雪愛。
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