蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
だがその顔は直ぐに元通り。

「…もう、何年も前の話です。その話はよしましょう。次の患者さんも待ってますので」

「…わかってます。最後に一つだけ」

雪愛の言葉に、耳だけを傾ける坂本先生。

「…論文を盗んだのは、坂本先生じゃなく、違う人ではありませんか?」

ガタッ…雪愛の言葉に、坂本先生は動揺した。雪愛は、自分が導き出した答えは間違っていないと思えた瞬間だった。

「…坂本先生、次の患者さんを呼んでよよろしいですか?」

看護師の声に、坂本先生は、はいと答えた。

「…お仕事中、すみませんでした」

頭を下げた雪愛は、診察室を出て行った。

診察の帰り、丁度お昼休みの時間に重なっていたので、雪愛は手土産を持って、蘇芳医院に向かった。

「…こんにちは」

雪愛の言葉に、一番に飛んできたのは由紀。

「雪愛ー!会いたかった!愛ちゃん見せて!…わぁ、かわいい!」

雪愛から愛を受け取った由紀は、ニコニコしながら、あやしていた。

「これ食べる?」
「あ!スイートポテト!食べる!鈴木さん!一緒に食べよう!」

由紀は事務員の鈴木を手招きした。

ワイワイと楽しく話していると、奥から蘇芳先生が出てきた。
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