蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「楽しそうだな」
「…秀明さん、お疲れ様です」

雪愛の笑顔を見て、蘇芳先生の顔がほころぶ。それを見た由紀は雪愛の肩を自分の肩で突いた。

「…もぅ、見せつけないでよ」

と言いながら、由紀はニヤニヤ。雪愛はテレながら、笑って誤魔化す。

待合室の椅子に腰かけた蘇芳先生が、雪愛に問いかけた。

「健診どうだった?」
「愛は問題なく元気に育ってるって言ってました」

「…雪愛は?」
「…ん?…うん、問題無しです」

一瞬の間を、蘇芳先生が見逃す訳もなく…

「…それで?どこが問題だって?」
「…ゔ…貧血がまだ治ってないって、薬を処方されました」

降参と言った顔をしながら、雪愛は診断結果を話した。

「…やっぱり、そうだと思った。無理だけはするなよ。産後は特に気をつけないと」

「…はい」
「家まで帰れるのか?午後の診察までまだ時間があるから、送ろうか?」

「だ、大丈夫ですよ。秀明さんは、まだまだ仕事なんですから…ゆっくり帰るから大丈夫です」

雪愛の言葉に溜息をつき、困ったように笑って、蘇芳先生は雪愛の頭を優しく撫でた。

「気をつけてな」
「はい…もう、帰りますね」

そして、雪愛は自宅に帰った。
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