蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…犯人探しが好きなんじゃなくて、知ってるから、言わなかったのではありませんか?」

雪愛の言葉に、表情はそのままだったが、坂本先生の目が微かに揺れた。

…しばらく沈黙した坂本先生だったが、困ったような笑みを浮かべた。

「蘇芳さんは、警察の人みたいですね」
「…ただの看護師ですよ」

雪愛の答えに、坂本先生は笑った。

「…犯人までいわなきゃいけませんかね?」
「…いいえ、私は、犯人を探してるわけじゃないんです。…ただ、蘇芳先生と仲直りして欲しいだけなんです。あんな事が起こる前まで、二人は良い親友だったんだと、話を聞いててわかりましたから」

「…今更、仲直りなんて出来ませんよ。蘇芳先生の信頼を全て失ってるんですから」

「…そんな事ないと思います。蘇芳先生は、そんな分からず屋じゃないですよ。…チョット毒舌なだけです」

「…プ」

坂本先生は吹き出してしまった。

「…貴女の手にかかると、あのスーパードクターの蘇芳先生も、ただの悪ガキみたいですね」

「…とにかく、一度会って話をしてみませんか?」

「…あの時、貴女がいてくれたら、蘇芳先生と、ずっと友人でいられたかもしれませんね」

「…今からでも遅くないです。こうやって会ったのも、きっと神様が仲直りしろって言ってくれてるんだと思います」
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