蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
次の日。雪愛は、坂本先生の下へ。両親との待ち合わせ場所は、某レストラン。

「本当に、今日だけなんですよね?」

待ち合わせ場所。雪愛は、坂本先生に念を押すように問いかけた。

「勿論です。見合いしろと煩いので、一時的に静かにさせたいだけなので」
「…坂本先生、お付き合いされてる人はいないんですか?」

「・・・」
「何も言わない所を見ると、いるんですね?」

雪愛の言葉に、坂本先生は苦笑した。

「なぜ、その人に頼まなかったんですか?」
「…ちょっと事情があって、身動きが取れない状態なんです」

「…と、言いますと?」
「…私の子供を妊娠してまして」

「へ?!じゃあ、尚更私なんかじゃなく、その人をご両親に会わせなきゃ」
「…そうしたいのはやまやまなのですが、切迫流産で、入院中なんです」

「・・・」
「ですから、お腹の子が落ち着いたら、ちゃんと紹介しようと思ってます。今は、彼女にストレスになることは避けたい」

「…愛してるんですね」
「…はい、彼女以外、私にはいませんから」

そう言って微笑んだ坂本先生の顔は本当に穏やかな笑みだった。二人が幸せになれるなら、ひと肌脱ごうと決めた雪愛は、満面の笑みを見せた。

「頑張りましょうね」
「…そんなに張り切らなくていいですよ」

そう言って、坂本先生は、クスクスと笑った。
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