蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…なんであんな所にいた?」

手当てをしながら、蘇芳先生は雪愛に問う。

「…急に具合が悪くなったのかと思って、声をかけたんで…ッ!」

消毒液が沁み、雪愛はかおをしかめた。

「…いい看護師だとさっきは感心したが、普段は抜けてるんだな」
「…」

蘇芳先生の言葉に、なんとも言えない顔をした。

「…今後は、不用意に声をかけるのは止めとけ」
「…でも」

本当に具合が悪くなっていたらと、雪愛が反論しようとした。

「…こっちの心臓がもたない」

その言葉に、反論の言葉を忘れてしまった。

「…先、生?」

…。

雪愛は、今の状況がうまく飲み込めない。

なぜ自分は、蘇芳先生の腕の中にいるのか?


「…あまり、心配をかけさせるな」

蘇芳先生の細長く綺麗な指が、雪愛の頬に触れた。

雪愛は、ドキドキして、言葉が何も浮かばない。

しばらく雪愛を見つめていた蘇芳先生の顔が、ゆっくりと雪愛の顔に近づく…。
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