蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
残りの夜勤の時間は、雪愛にとって、拷問でしかなかった。自分の持ち場に帰り、榊さんの代わりにラウンド(巡回)しにいき、詰所に帰ると、三条先生が、カルテを見てるし…

朝になり、早出の人に申し送りをしていると今度は蘇芳先生がやって来て、いろんな指示が飛び…最後は、蘇芳先生と三条先生に挟まれ、もうどうしていいかわからなかった。

「お疲れ様でした」

やっと帰ることを許された雪愛は、更衣室に逃げ込んだ。そしてようやく、深い溜息をついた。

「…疲れた」

仕事以外でこんなに疲れるとは思わなかったと、雪愛は心底疲れ果てた。

「…」

着替えを済ませ、外に出た雪愛は、また溜息をついた。

…蘇芳先生が、見えたが、気付いていないフリをして、帰ろうとしたが、それは許されなかった。

「…島崎」
「…お疲れ様でした…失礼します」

作り笑い浮かべ、通り過ぎようとしたが、蘇芳先生に手を掴まれた。

「…何するんですか?」

困惑顔で言う雪愛。

「…飯付き合え」
「…疲れたので帰ります」

全力で拒否してみたが。

「…助けてやったのは誰だった?」

…そんな事を言われたら、断れるわけもなく…。
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