蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
蘇芳先生に促され、雪愛は仕方なく助手席に乗った。ご飯を食べるだけだから、と、雪愛は自分に言い聞かせた。

「…何か、食いたいものは?」
「え?あ〜…牛丼」

道の先に、牛丼チェーン店が見えた雪愛は、つい、口に出してしまっていた。

「…は?牛丼?」

ちょっと驚いたような声を出した蘇芳先生。雪愛は、慌てて次の言葉を発した。

「つ、疲れたし、お腹ぺこぺこなんですよ!救急のヘルプに行ったし、休憩もほとんどなくて、まともに夜食を食べる時間もなくて…」

あ〜…穴があったら入りたい。雪愛はそう思う。女の子なら、パスタとかオムライスとか、可愛らしい物をチョイスするだろうし。

「いいよ、俺も腹減ってるし。あそこでいいか?」

蘇芳先生の指の先には、雪愛が目に留まった牛丼チェーン店。気づかれないように溜息をついた雪愛は、小さく頷く。

駐車場に車を止め、2人で店内に。

雪愛は並を頼み、蘇芳先生は、大盛りを頼んだ。

「…蘇芳先生って、細い体なのに、よく食べるんですね」

細身の体から想像つかないと言った顔の雪愛。そんな雪愛を見て、蘇芳先生は小さく笑う。

「これくらい、普通だろ?男と女の違い?」
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