蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
突然、仕事とは無関係な質問に、雪愛はめを丸くする。

…すると、三条先生は優しい笑みを浮かべた。

「…好きだよね?…蘇芳先生の事が」
「…えっと、…あの…」

三条先生の言葉に、雪愛は困惑する。

自分が蘇芳先生の事を好き?

そう思った瞬間、雪愛の頭の中で、蘇芳先生先生との時間が走馬灯のように駆け巡る。

「…雪愛ちゃん」

三条先生の目の前にいる雪愛の目から、大きな涙の雫が落ちていく。

「…ごめんなさい…私、好きみたいです。でも、ダメですよね。こんな想い…蘇芳先生には、決まった女性がいるんですよね?」

ゴシゴシと涙を拭い、雪愛は力なく笑う。それを見た三条先生の胸は張り裂けそうに苦しくなった。

「…大丈夫…俺がいるよ。…ダメじゃないかもしれない」
「…え?」

「…自分に正直に行動してみなよ。…もし、それでダメだったら、俺がいる。俺のところに来ればいい」
「…三条先生」

三条先生は、雪愛の頭を優しく撫でると、診察室を出て行った。

本当は、今すぐ雪愛を自分のモノにしたかった。でも、雪愛の心が蘇芳先生にある以上、何をやってもダメだと分かっている。三条先生は、右手を握りしめ、自分の気持ちを押し殺した。
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