蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
…自分の気持ちに気づいてしまった雪愛。だけど、蘇芳先生には決まった女性がいる。三条先生は、自分の気持ちに正直に行動したほうがいい。と言われたけど、そんな事ができるはずもなく。

…気がつけば、蘇芳先生を避けている自分に気づき、溜息をつくしかなかった。

金曜日まで、気持ちをなんとか切り替え仕事に集中した雪愛。そんな雪愛を見守る三条先生が、いつになく優しくて、噂は益々大きくなる一方だった。

「…三条先生、お先に失礼します」

業務を終えた雪愛が、三条先生に挨拶する。

「…お疲れ様。…雪愛ちゃん」
「…はい?」
「いや…ごめん、なんでもない」

何か言いたげな三条先生に首を傾げた雪愛だったが、なんでもないと言われ、腑に落ちないまま、雪愛は診察室を出た。

帰り支度をしていると、カチャリと何かが落ちた。

「…鍵」

雪愛が手に取ったのは、蘇芳先生の家の鍵。

「…返した方が…いい、よね?」

1人呟いた雪愛は、その鍵を握りしめた。
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