蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…な、何でもないです、なんでも!お、お風呂お借りします!」

蘇芳先生のせっかくの申し出に水を差したくなくて、そう言った雪愛は、お風呂場に逃げ込んだ。

…。

それから、ようやくお風呂から上がってきた雪愛は、リビングから話し声がして、耳を傾けた。

…何やら、蘇芳先生が誰かと言い合いしている。

なんだか、出て行きづらくて、その場に立ち尽くしてしまった。

電話が終わっても、しばらくその場を動けない雪愛。

…なかなかお風呂場から出てこない雪愛が心配になったのか、蘇芳先生が廊下に来ると、壁にもたれて、俯いてる雪愛が目に入って、驚いている。

「何、してる?」
「…へ?…あ、いえ、何でもないです」

作り笑いを浮かべ、雪愛は蘇芳先生の元に近寄る。

…その後、二人はベットの中で抱き合うも、雪愛は、明日はオペだから、我慢してくださいね?といい、ちょっと拗ねた蘇芳先生を宥めるように抱きしめると、目を閉じた。

『…薫子、いい加減にしろ』

と、蘇芳先生が発した言葉が頭から離れずなかなか雪愛は眠れなかった。

…薫子って、誰だろう。

雪愛は、先に眠った蘇芳先生の頭を撫でながら、そんな事を考えていた。
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