蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…ご馳走様」
「…お粗末様でした」

受け取ったお弁当箱を、ハンカチで包んでいると、蘇芳先生は立ち上がり歩き出した。

「…島崎」
「…なんですか?」

背を向けたまま、雪愛の名を呼んだ蘇芳先生。

「…俺が、外来診察の時、お前とコンビの時は、弁当作って来い」
「…は?」

「…看護師としての、お前の使命」
「…なんですか⁈その当てつけな使命は?」

驚く雪愛をよそに、蘇芳先生は至って冷静に。

「ま、よろしく」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!蘇芳先…生…」

雪愛の制止なんて、聞こうともせず、蘇芳先生は行ってしまった。

「…勘弁してよ。今日月曜日だよ?金曜日まで、毎日って事?…お弁当なんか、食べさせるんじゃなかった」

そう言って、盛大な溜息をついた雪愛。

…蘇芳先生が、雪愛の料理の上手さに驚いた事など、雪愛本人は、全く気づかない。
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