蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
雪愛の驚きように首を傾げる薫子先生。その横にいる三条先生は、溜息をついている。

「…啓介、雪愛ちゃんは貴方の彼女よね?」

「…前に話さなかった?雪愛ちゃんは、俺の彼女じゃないよ。雪愛ちゃんはす…」

三条先生はそこまで言いかけて、慌てて口を噤んだ。

…薫子先生が、蘇芳先生を好きな事を知ってる三条先生は、口が裂けても言えなかった。薫子先生の異常なまでの嫉妬ややってはいけない行為まで。

…三条先生は、今でも雪愛の事が好きだ。いくら雪愛が蘇芳先生を好きでも、その気持ちは変わらない。だから、薫子先生が、雪愛を傷つける事だけは許せない。いや、絶対させない。

「…啓介?」
「…いや、とにかく、雪愛ちゃんは、俺の彼女じゃないから、困らせるような事は言わないであげて」

雪愛を守ろうとする三条先生を見て、薫子先生は微笑ましく思う。

「…そう、雪愛ちゃん、困らせてしまってごめんなさい。…啓介、ちょっと」

雪愛に頭を下げた薫子先生は、三条先生を連れて行く。

「…啓介、そんなに好きなら、もっと本気にならなきゃ」
「…」

「…雪愛ちゃん、とても可愛らしい子じゃない。あんなに可愛い子、放っておいたら、直ぐに他所の男に持ってかれるわよ…じゃあ、私は行くわね」

薫子先生は、三条先生の肩を叩き、その場を後にした。

三条先生は思わず深い溜息をついた。
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