蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
少し離れたところで、雪愛は薫子先生と三条先生を見ていた。

…噂の事は、本当に初耳だった。どこでそんな噂が広がったのか。雪愛は溜息をついた。

「…私には、蘇芳先生だけなのに」

…なかなか話が終わらない2人に、雪愛はヤキモキした。そろそろ持ち場に行かねばならない。

「…もう、行こうかな」

そう呟いて、雪愛は自分の持ち場に向かって歩き出す。

「…待って、雪愛ちゃん」
「…ぁ、三条先生。お話は終わったんですか?」

三条先生に呼び止められ、振り返った雪愛はそう言った。

「…あの、さっき、薫子先生が言った事は、気にしなくていいから」
「…噂の事、ですか?」

「…うん」
「…噂は、噂ですから…」

雪愛は、困ったように笑った。

「…それから、雪愛ちゃん、」
「…?」

「…雪愛ちゃんが、蘇芳先生を好きな事、薫子先生にだけは、知られないようにして」

「…え??どうしてですか?」

三条先生に答えを聞こうとしたのに、三条先生のピッチがなり、慌てて三条先生は持ち場に帰って行った。

「…聞けなかった。…ぁ、いけない!私も行かなきゃ」
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