蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
お母さんは少し驚きながら、雪愛を見た。

「ベッドで移動だと聞いたんですけど、抱っこでもいいんですか?」

雪愛は、笑顔で対応する。

「かまいませんよ。点滴は私が持ちますから、奏太君が安心して手術室に行けるようにしてあげたいので、いいよね、由紀ちゃん」

「…いいわよ。それじゃあ、私は、持ち場に帰るわよ。ベッド移動だと、私がいるけど、お母さんが抱っこしてくれるなら、用はないから」

「…ごめんね」

「…何言ってるの。患者の気持ちが、最優先なんだから。ほら、早く行って、みんな待ってる」

「…うん。…行きましょうか、お母さん、奏太君」

雪愛の言葉に、2人は頷いて、3人で手術室に向かった。

「…武田奏太君、5歳です。よろしくお願いします」

手術室の看護師に言う。

「武田奏太君ですね。…眠っている間に直ぐに終わるからね、頑張ろうね、奏太君」

手術室の看護師は、マスクをしているため、目だけしか見えないが、精一杯笑顔で言う。奏太君は、少し安心した顔をして頷いた。
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