蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
無事に手術を終えたとは言え、急変があってはいけないということで、その日は1日ICUでの管理となった。

仕事中も、奏太君の事が頭から離れなかった雪愛だったが、無事の知らせを聞き、安堵の表情を浮かべた。

昼からは、各部屋のシーツ交換の日だった今日、雪愛は由紀とペアで、シーツ交換に回った。

「…最後は、当直室ね」
「…うん」

雪愛たちは2人で当直室に向かっていたが、由紀に別の仕事が入ってしまった。

「…ごめん、雪愛。一人で出来る?」
「大丈夫。一人でも全然出来るから」

雪愛の言葉に、頷いた由紀は、詰所に帰る。雪愛は、シーツのセットを持つと、当直室に向かって歩き出した。

「…よし、完璧」

2人の方が、早くてヨレも少ないが、1人だとやっぱりシワが入ったりする。それをなんとか完璧にこなせた雪愛は満足そうに微笑んだ。

その時だ。突然当直室のドアが開いて、誰かが入って来た。雪愛は少し驚き、振り返る。

「…キャ!…」

振り返ると同時に抱きすくめられた雪愛。硬直してしまう。…恐る恐る顔を上げると。

「…蘇芳先生?」

オペ着から、白衣に着替えた蘇芳先生だった。
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