蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…ビックリした」
「…悪い、驚かせるつもりはなかった」

困ったような顔で微笑んだ蘇芳先生に雪愛も笑って、首を振った。

「…蘇芳先生、奏太君の事、ありがとうございました」
「…ホント、一時はどうなるかと思った」

「…え?」

手術の内容までは聞いていなかった雪愛は目を丸くした。

手術中、奏太君の容態が急変して、一時は生死をさまよったとか…

難しいオペだとは聞いていたが、そこまでとは思わなかった。

「…お疲れ様でした」
「…もう少しだけ、充電させて」

そう言って、蘇芳先生は、雪愛をギュッと抱きしめた。

雪愛は、労いの意味も込めて、蘇芳先生を抱きしめる。

3時間もの間、蘇芳先生は、手術に集中していたのだ。その集中力はハンパない。

雪愛は、手術室での仕事は、研修の時に見た事があるだけで、実際の経験はない。自分にも、蘇芳先生の役に立てたらなぁと思うが、まだまだ経験不足だ。

だから今は、こうやって、蘇芳先生を抱きしめる事で、蘇芳先生が、少しでも、元気が出るなら、いくらでも、抱きしめてあげたいと思う。

・・・しばらくして、ようやく雪愛から離れた蘇芳先生は、穏やかな表情になっていた。

「…ありがとな。充電できた」
「いいえ、こんな事くらいなら、いくらでも」

2人は見つめ合い、微笑みあった。
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