蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「それでも、俺は、君を諦められない」

ギュッと、痛いくらいに、雪愛の手を握りしめた三条先生は、それ以上何も言わず、喫茶店を後にした。

独りになった雪愛は、思わずため息をつく。…どうやったら、諦めてくれるのか?その答えが出る事もなく、雪愛は、アパートに帰った。

…いつものように、身の回りの用を済ませ、1人で食事をし、お風呂に入り、歯磨きをして、ベッドに入る。

…今夜は、隣に、蘇芳先生はいない。

仕事なのだから、当たり前なのだが。…二日間一緒にいただけなのに、もう、蘇芳先生が隣に寝ているのが当然のように思えて、とても寂しさがこみ上げてくる。

スマホを手に取り、蘇芳先生の番号を表示してみるも、掛けられるはずもない。

「・・・ぁ!」

掛けるつもりはなかったのに、指が当たってしまい、鳴らしてしまった。

雪愛は慌ててそれを切ると、溜息をついた。

すぐに切ったので、Oneコールしたかしてないか、くらいだろうから、間違いだと思うだろう。

勝手にそう思う事にして、雪愛は、ギュッと目を瞑った。

…なかなか、眠れなくて、蘇芳先生に抱きしめてほしくて、雪愛は、布団をギュッと握りしめて、眠りについた。

…明日は、準夜勤だ。少しばかり遅く起きても問題はない。


・・・・・。

そう思っていたのに、朝7時。携帯の着信で起こされる。

「・・・もしもし?」
『…開けろ』

「・・・は?」

夢見心地の雪愛は、全く理解できない。

『玄関を開けろと言ったんだ』
「…誰?」

『…蘇芳だけど』

その言葉に、雪愛は、飛び起きた。
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