蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
出ようか迷っていると、今度は、手に持っていたスマホが鳴る。

スマホを見ると、三条先生で。

カメラには、三条先生がスマホを握っているのが見えた。

…雪愛が、ここに居ることを知っているのかもしれない。

雪愛は、携帯に出ることをせず、玄関に向かうと、ドアを開けた。

「…やっぱり、ここに居た」
「…三条先生、どうしてここに?」

「…蘇芳先生に頼まれたんだ」
「…え?」

「雪愛ちゃんを頼むって」
「…あの、意味が分かりません」

相変わらず困惑顔の雪愛に、三条先生は、困ったように笑った。

「…急患があって、どうしても、外科医が必要だった。あいにく、蘇芳先生しか居なくて、検査やらなにやら、結果によっては、オペになる」

「…そう、ですか」

やっぱり、急患があったのか。仕方がないとは言え、雪愛はシュンとした。

「…蘇芳先生が終わるまで、俺が雪愛ちゃんを任されたんだけど、今から出られる?」

三条先生の申し出に、雪愛は首を振った。蘇芳先生とデートの約束をしてたのに、三条先生と出かける気には到底ならない。
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