蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…蘇芳先生が、帰って来るまで、ここに居ますから…三条先生は帰って下さい。せっかく来て頂いたのに、申し訳ないんですが」

俯き加減でそう言った雪愛。

「…蘇芳先生が帰ってこなかったら?」

三条先生のありえない言葉に、雪愛は目を見開いた。

「…どうしてそんな事言うんですか?」
「…蘇芳先生の傍に、薫子先生がいるから」

薫子先生?…三条先生のお姉さん。その薫子先生が傍にいると、何故帰って来ないのか?

「…雪愛ちゃん、よく聞いて」
「…」

三条先生は溜息をついた。そして。

「…薫子先生は、ずっと、蘇芳先生が好きだ。ずっと蘇芳先生に恋人になって欲しいと思ってる」

「…でも、蘇芳先生は」

雪愛を愛してると言ってくれた。

「雪愛ちゃん、蘇芳先生の傍に、君がいるのはよくない。…薫子先生に、めちゃくちゃにされる」

「…どういうことですか?」

「薫子先生は、絶対に、蘇芳先生に女は近寄らせない。恋人になった雪愛ちゃんを、薫子先生はきっと許さない。…君が傷つく前に、俺が、蘇芳先生から、君を奪う。君の傷つく顔なんて見ていられない」
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