蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…私は、蘇芳先生が好きです。大好きです。…何があっても、蘇芳先生の傍を、離れるつもりはありません」

「…雪愛ちゃん」

「…帰って下さい…お願い、帰って」

雪愛は勢いよくドアを閉めて、その場にしゃがみ込んだ。

「…蘇芳先生は、私の事、愛してるって言ってくれたもん。…蘇芳先生は、薫子先生の所へなんて行かない…」

…しばらくその場にしゃがみ込んでいた雪愛だったが、思い立ったように、カバンを持つと、三条総合病院に向かった。

…蘇芳先生は、急患の診察に当たっているはず。

それだけを考え、院内へ。

私服のままのおかげか、いつもはアップにしている髪を下ろしてるおかげか、スタッフに気づかれる事なく、院内を探し回る。

…雪愛は足を止めた。

…蘇芳先生を見つけたのだ。

「…蘇芳先生の、…バカ」



小さな声で呟いた雪愛の声が聞こえたのか?蘇芳先生が振り返る。

…その傍らに、たった今、蘇芳先生にキスをした薫子先生が同時に雪愛を見て、…そしてほくそ笑んだ。

「…雪愛!」

蘇芳先生の言葉にも、雪愛は反応する事なく、その場を走り去った。
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