蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
その場に力なくしゃがみ込んだ薫子先生。

…初めてだった。…蘇芳先生に怒鳴られた事が。

「薫子先生」

しゃがみ込んだ薫子先生に、誰かが声をかけ、手を差し伸べて、ゆっくりと立たせた。

「…見てたんですか?…悪趣味ですね」

薫子先生が毒を吐く。

「…すみません。たまたま通りかかったのて」
「…見られたついでに、恨み言の一つでも聞いてくれますか?」

「…私でよければ」
「…心療内科医でしょ、西川先生」
「…一応」

そう言って苦笑した西川先生。

「…うってつけじゃないですか」
「…」

薫子先生は、西川先生を睨むと、白衣を引っ張る。

「…行きましょ」
「…はいはい」

…それから何時間、薫子先生は、西川先生に恨み言を言い続けたのか?でも、西川先生は、何時間でもその話を聞き続けた。
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