蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
「…キス、されてゴメン」
「…『されて』?」

「…不本意のキスだ。あんなのキスじゃない。でも、雪愛を傷つけた事にかわりはない、だから、ゴメン」

「…なんで、連絡くれなかったんですか?」

「…急患が立て続けに来て、連絡する暇もなかった。…その事も悪いと思ってる。…ゴメンな…デートもすっぽかしたし」

…医師と言うものは、自分の時間があってないようなものだ。連絡できなかった事は怒っていない。確認しておきたかっただけで…

「…蘇芳先生が…好きで…好きで…どうしようもない…どうしたらいいんでしょう」

ぐすぐすと鼻をすすりながら、雪愛が言う。蘇芳先生は堪らなくなって、雪愛を抱き寄せた。

「どうもしなくていい。そのまま俺だけを好きでいてくれたら」

「…でも、薫子先生が」

「…アイツは、なんとかする。もうこれ以上、雪愛を傷つけたくない、傷つけさせない」

そう言った蘇芳先生は、より一層雪愛を強く抱き締めた。
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