自殺列車
「お……旺太!!」


振り向くと、旺太もその光景を唖然として見つめていた。


愛奈の舌に開いた真新しい穴は徐々に広がり、ボトボトと大量の血が椅子へと落ちていく。


「あ、愛奈……」


旺太も、あたしも、どうすることもできなかった。


きっと、愛奈は思い出してしまったんだ。


母親からの激しい虐待を。


そして、それが今幻となって再度愛奈を襲っているんだ。


「あぁぁぁぁぁ!!」


愛奈の叫び声が聞こえた瞬間、開きすぎた穴が愛奈の舌を切り落とした。


舌の半分ほどがボトッと落ち、あたしは悲鳴を上げた。


愛奈は苦痛に呻き、血と涙の中をもがき苦しんでいる。


愛奈は低いうめき声をあげながら、ゆっくりとこちらへ向かって歩いてくる。


それはまるでゾンビのような姿で、あたしは思わず旺太の後ろに隠れてしまった。


愛奈は半分になった舌で「ごめんなさい、ごめんなさい」と、繰り返す。


「暗くて狭い……それにとても寒いよ……ねぇお母さん窓を閉めて。このままじゃ凍えてしまう」
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