自殺列車
「残り30はお前たちの償い。スーツの男はそう言ったんだよ」


俺は旺太に向けて言う。


しかし、旺太はその意味が理解でないらしく、困った顔を穂香へと向けた。


穂香も困ったように首を傾げている。


「思い出した……思い出したんだよ、俺……」


震える声を抑えながらそう言ったけれど、うまくごまかせたかどうかわからない。


ビビッていると思われるのも嫌で、俺は窓へ向けて走った。


どうせ、こうなる運命なんだ。


もたもたしていたら、自分が余計に苦しみ、周りにも恐怖を与えるだけだった。


「ちょっと、危ないでしょ!?」


愛奈が俺を止めようとする。


しかし、俺は愛奈の静止を振り払った。


その瞬間、ズキリと胸が痛んだ。


俺は愛奈の事を……。


そこまで考えて、思考回路を遮断した。


どうせ、持っていたって無駄になる気持ちだ。


それならいっそ何も考えない方がつらくない。


「俺は喧嘩だ。それを思い出せば、すべて終わり……。俺は思い出した。だか
ら、ここから出なきゃいけねぇ」


せめてものヒントを残そうとして、俺はそう言った。


「何を言っているの、朋樹!」


愛奈が叫ぶ。


俺はチラリと愛奈へ視線を向けて……闇へと手を伸ばした。


瞬間、俺の体は闇の中の何かに引っ張られるようにして外へと引き込まれていったのだった……。
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