自殺列車
今までだって、こかされたり叩かれたりすることはあった。


でも、道具を使ってあたしをいたぶるような事は、一度もなかった。


「可愛くしてあげるよ」


リーダー格の子が、カッターナイフを受け取ってあたしの目の前にかざす。


「やっ……!」


突き付けられた切っ先から逃げるように顔をそむけたその瞬間、あたしの右腕をナイフが切り裂いた。


分厚い冬服を簡単に貫通し、腕に痛みが走る。


「あーあ。動くから変な場所が切れちゃったじゃない」


彼女はそう言い、笑った。


あたしは唖然として彼女を見つめた。


人を切りつけておいて何も思わないのだろうか。


4人はただクスクスと笑い声を上げているだけで、誰1人としてこんなバカなことやめよう。


と、言う人はいなかった。


このままでは殺される。


本能的にそう感じていた。
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