自殺列車
「やめて……」


か細い声で言うと、彼女は「なぁに? 聞こえないよ?」と、楽しそうに言った。


そして、またナイフを振り上げたのだ。


あたしは目を見開きその場から動けずにいた。


そして次の瞬間、ナイフはあたしの右頬を切り裂いていた。


同時に前髪も切れ、バッサリと黒髪が地面に落ちた。


「あはは! ほら、スッキリした!」


頬の肉が削げて、それが前髪と一緒になって落ちているのが見えた。


恐怖と不安と痛みが同時にあたしに襲い掛かり、声にならない悲鳴を上げた。
殺される!


本当に殺されてしまう!!


ジタバタともがくように出口へ向かって進むあたしの前に、彼女が立ちふさがった。


「ねぇ、テスト期間は終わって明日からしばらくは自由登校だよ。誰も、あんたが学校に来なくても不思議がらないよね」


その言葉が不気味に脳裏に響く。


「むしろ、今まで普通に登校して来てたのが不思議なくらいなんだからさぁ……あんた、もう学校に来なくていいんじゃない?」


そう言う彼女の目にはあたしに対する憎しみがこもっていた。
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