自殺列車
そう思い、穂香の肩に手を伸ばす。


その瞬間。


俺の手は穂香の肩をすり抜けてしまったのだ。


「触れることも会話をすることもできない」


そう言われハッと振り向くと、いつの間にか車掌が俺の隣に立っていた。


「どういうことだよ、それ」


「ここは過去の電車内だ」


そう言い、車掌は電車の上の方を指さした。


そちらへ視線を向けると、電光掲示板があった。


そしてそこ流れていた文字は……《残り31》の、文字……。


俺たちが電車に乗った時は《残り30》と書かれていたはずだ。


「この数字は一体どういう意味なんだ?」


そう聞いた時、電車内にドンッ! という激しい衝撃が走り、俺はバランスを崩してその場に尻餅をついてしまった。


「いってぇ……」


痛みに顔をゆがめながら、立ち上がる。


すると、窓の外は暗闇に包まれていたのだ。


ゾクッと一瞬にして背筋が寒くなるのを感じる。


電車内にいた俺たちが何事かと外を見ている。


「これって……同じ……?」


「そうだ。この電車は繰り返されている」


車掌が言う。


繰り返されている……?
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