自殺列車
「でも、俺はこんな経験をした記憶はない!!」


そう叫んだ瞬間、気が付いてしまった。


何か大事な事を忘れている。


記憶の違和感。


それはみんなが感じていると言った。


「まさか……」


ドクドクと心臓が高鳴り、嫌な汗が噴き出して来る。


「一度償いを終えると、その記憶は消される。そしてまた繰り返される」


抑揚のない車掌の声が脳内に響き渡る。


記憶は消される。


そしてまた繰り返される。


俺は……俺たちは、一体何度これを経験してきた?


グルグルと世界が回っているような感覚に襲われ、俺はその場に膝をついた。


ひどく混乱していて、これは夢なんじゃないかと思い始める。


でも……。


「窓は開くんだね」


その声に顔を上げた。
< 155 / 222 >

この作品をシェア

pagetop