自殺列車
俺はポケットからスマホを取り出し、時間を確認した。


まだ余裕のある時間帯だ。


普段ならそんなに心配もしなかったかもしれないが、時間に余裕があることで俺は女性へ近づいて行った。


横断歩道の半分ほどを渡っていた女性に声をかける。


「大丈夫ですか? 今ここは信号が壊れているから、一緒に渡りましょう」


そう言うと、女性はサングラスをかけた顔をこちらへ向けて微笑んだ。


「ご親切にありがとう」


遠くから見ただけじゃわからなかったけれど、自分と大して変わらない年齢に見える。


この時間から私服で歩いているという事は学校は行っていないか、盲学校に通っているのかもしれない。


俺は女性の手を取り、歩調を合わせて歩いて行く。


「よく、ここを通っていますよね」


俺がそう言うと、女性は少し驚いた顔を浮かべた。


「そうです。この先にある学校へ通っているの」


「俺も、丁度学校へ行く時間で、ここは通学路です」


そう言うと、女性は「学生さんなんですね」と、微笑んだ。
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