自殺列車
☆☆☆

窓の外は暗闇だった。


何も見えない、なにも聞こえない。


そんな闇の中自分の体が落ちて行くのを感じる。


恐怖を感じて手を伸ばしても、掴まれるものはなにもない。


みんなも、こんな風だったんだろうか。


こんな怖い思いをすると思い出しても、飛び降りる事を選んだんだ。


俺は唯一外へ出なかった愛奈を思い出していた。


愛奈は電車内で苦しみもがき、そして死んで行った。


外へ出なければああなる事を、みんな思い出していたのかもしれない。


だから、残された俺に何かを告げるより先に、窓の外に出た。


思い出せば、もう時間がないのかもしれない。


少しでも自分が楽に死ねるように、幻に殺される前に死を選ぶ……。


そんな、気がした。


そこまで考えた時、不意に世界が明るくなった。
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