自殺列車
突然明かりが差し込み、俺は眩しさに目を細めた。


見えたのは見慣れた街だった。


いつも通っていた学校が見える。


女性を助けた歩道。


自分の家。


それらを見た瞬間、懐かしさで胸が締め付けられていた。


もう、何日もここへ戻ってきていないような気がする。


地面が近づいてきた時、俺の落下速度は急速に遅くなった。


そして、ふわりと着地した。


どこにもケガはなく、ホッと胸をなで下ろす。


その瞬間、今まで聞こえていなかった周囲の音が聞こえ始めた。


車の走って行く音。


人の会話。


鳥の鳴き声。


雑多の音に、周囲を見回す。


「戻って来たんだ……」


そう呟く。


腕を確認すると、針は着々と進んでいるのがわかった。
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