自殺列車
俺にはそんな夢はなかったから、安田の事を本当にすごいヤツなんだと思っていた。


その時、ピッシャーが投げた球が俺の体をすり抜けて安田へと飛んで行った。


安田はバッドを振る。


しかし、ボールはそのままキャッチャーのグローブへと吸い込まれて行った。


「ストライク!」


審判の声が飛ぶ。


俺はその光景を唖然として見ていた。


どうした?


こんな玉、お前なら余裕だったじゃないか。


安田の顔が苦しげに歪み、野球部の監督がため息をはいたのを見た。


「ツーストライク!」


うそだろ安田。


赤いユニフォームの相手はうちの学校よりも格下で、余裕で勝てる相手だ。


俺は野球の事はよくわからないけれど、安田がそう言っていたから覚えているんだ。


「バッターアウト!!」


審判の声が広場に響く。


「安田はもうダメかもしれないな」


どこからともなく、そんな声が聞こえて来た……。
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