自殺列車
☆☆☆

それからの試合は散々な結果で終わった。


エース安田の不調が他のメンバーにも伝染したかのように、ミスを連発し、結局松木高校野球部は一点も取れないまま練習試合を終えたのだ。


こんなのは……ありえない。


俺はうなだれる安田について帰ってきていた。


他にも確認したい場所はあったけれど、ここまで急速に落ちぶれてしまった安田の事が気がかりだった。


家に帰ると安田は両親に挨拶もせず、まっすぐ自分の部屋に入るとカギをかけてしまった。


そのドアをすり抜けて中へ入ると、野球雑誌が床に散乱し県で優勝した試合の表彰状がビリビリに破られているのが目に入った。


「安田、どうしたんだよこれ!」


思わず声をかける。


しかし、安田に俺の声なんて聞こえない。


破られた表彰状をかき集めようとかがみこむが、それに触れる事さえできなかった。


安田はユニフォームを脱ぎ捨てると、そのままベッドへもぐりこんでしまった。


汗をかいて泥だらけの状態なのに、全く気にしていない様子だ。


違う。


こんなの、俺の知っている安田じゃない。


俺は苦い思いで安田を見つめた。
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