自殺列車
「実は、俺もその蝶を見たんだ。あまりに綺麗でフラフラ付いて来たら、ホームにたどり着いていた」


旺太がそう言い、真剣な表情になる。


「ここにいる全員が同じ蝶を見ていたってこと? でも待って、あたしがホームに付いた時に蝶の姿はなかったよ?」


あたしが言うと、旺太は頷く。


「俺の場合も全く同じだ。ホームに入った時には蝶はいなくなっていた。だけど、この汽車に乗り込んだ時には確かに見たんだ」


「だけど、乗ってみると蝶はいなかった……」


旺太の言葉をつなぐように、澪が言った。


同じだ。


みんな、全く同じだ。


あたしは自分の背中に冷たいものが走るのを感じていた。


「まるで、ここに集められたみたいな感じね」


愛奈が呟くように言う。


きっと、それはみんなが思っていた事だろう。
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