自殺列車
目をあけると、そこは自分の家の目の前だった。


見慣れた家にホッと胸をなで下ろす。


随分と長い事帰っていなかったような感覚がある。


やっと帰ってこられた。


そんな安心感に包まれたまま、玄関を通過した。


入った瞬間、家庭どくとくの香りがして俺は自然と顔をほころばせていた。


この香り、懐かしい。


そのまままっすぐ自分の部屋へ入ると、最後に出かけたままの状態がそこにあった。


読みかけの漫画。


脱いだパジャマ。


まるで、ついさっき部屋から出て来たような気分になる。


「少しも手つかずなんだな……」


俺はそう呟き、部屋の中を見回した。


小学生の頃、ひいじいちゃんが死んだ時に遺品整理をしていた事を思いだす。


じいちゃんが持っていた物を片づけ、いらない物は捨てる。
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